『利益とは社会貢献の証しでありさらなる社会貢献をする』田坂広志(シンクタンク・ソフィアバンク代表)
1.日本という国は、世界の資本主義を変えていく起点になると思っています。なぜなら、これから世界の資本主義の根底にある経済原理に、大きなパラダイム転換が起こる。しかし、そのパラダイム転換の結果、求められるようになる「新たな価値観」とは、実は、日本という国が昔から大切にしてきた「懐かしい価値観」でもあるからです。
2.たとえば、いま世界の潮流となっているCSR(企業の社会的責任)。しかし、日本型資本主義の根底には、もともと「世間のために」という思想があります。昔から日本では、「働くとは、傍(はた)を楽(らく)にすることだ」といわれる。それが日本人にとっての労働の意味でした。だから、日本企業においては、誰もが「世のため、人のため」といって一生懸命に働き、そこに働き甲斐を求める文化があったのです。
3.たとえば、かって松下幸之助が語った言葉。「企業は、本業を通じて社会に貢献する。利益とは、社会に貢献したことの証しである。企業が多くの利益を得たということは、その
利益を使ってさらなる社会貢献をせよ、との世の声である」。これらの言葉に象徴されるように、日本型資本主義においては、「利益とは社会貢献をするための手段であり、社会貢献の証しである」との深い思想があったのです。
(参考:「Voice」2010年5月号)
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