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2010年7月 3日 (土)

『孔子の精神の発達史』伊與田覺(論語普及会学監)

1.「論語の為政(いせい)第二(だいに)に、孔子の大変有名な言葉があります。「吾(われ)十有五にして学に志し、三十にして立ち、四十にして惑(まど)わず、五十にして天命を知り、六十にして耳順(みみしたが)い、七十にして心の欲する所に従えども、矩(のり)を踰(こ)えず」。これは孔子の精神の発達史といえましょう。孔子は、父親が早く亡くなったため母親の手で育てられ、十有五にして学に志しました。学に志すとは、立派な人物になろうと志すことです。

2.孔子は、あらゆる人から貪欲に真理を聞き出し、学びを深めていきました。その学識が知れ渡り、人に教えることによって身を立ててゆこうと決意しました。それが三十にして立つということです。その後、様々な葛藤を乗り越え、四十にして惑わなくなったのです。孔子自身三省(さんせい)を繰り返し、いかにすれば過ちを少なくすることができるかと研鑽(けんさん)を重ね、五十にして天命を知りました。それからは天と交流できるようになり、人に見えざるものが見え、聞こえざる声が聞こえてくるようになったといいます。

3.しかし孔子は、そこで思い上がることなく、ますます謙虚に学び続け、六十にして耳順う境地に到りました。常に反省し、自分は他人と少しも変わらない。いたらない人間だと学
んだ結果、七十にして心の欲するところに従えども矩を踰えず、すなわち、自分の思うままに振る舞っても過ちを犯すことの少ない人生に、ようやく到達することができたのです。
(参考:「致知」2010年5月号)

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