【主張】日韓併合100年 いまさらなぜ首相談話か
8月29日の日韓併合100年に向けた首相談話について、菅直人首相と仙谷由人官房長官は「慎重に検討する」との答弁を繰り返している。国民に中身を知らせず、議論も尽くさないままの談話発表は許されない。
日韓併合をめぐる両国間の大きな対立点は、100年前の明治43(1910)年に結ばれた併合条約の法的効力をめぐる争いだ。
昭和40(1965)年の日韓基本条約で、第2条の「もはや無効である」との解釈をめぐり、日本側は「併合条約そのものは有効に結ばれた」と主張した。これに対し、韓国側は「日本の不当な圧力によるもので、締結時から無効だった」と主張した。
この対立は現在も尾を引いている。3月に発表された第2期日韓歴史共同研究の報告書でも、「明治政府の強制はあったが、日韓併合条約は有効だった」とする日本側学者の見方と、「大韓帝国の皇帝(高宗)の署名がなく、無効」とする韓国側の主張は、ほとんどかみ合っていない。
だが、2001年、米国での国際学術会議で、欧米の国際法学者らは「日韓併合条約は国際法上は不法なものではなかった」などと韓国の学者の一方的な見解を批判した。日本側の見解が国際的に受け入れられている。
韓国が首相談話に何を期待し、菅内閣が何を盛り込もうとしているかは分からないが、仮に、併合条約を「当初から無効」とする韓国側の主張に同調するような内容であれば、重大な禍根を残す。
単なる“謝罪談話”で終わるにしても、韓国は内容を不満として強く抗議してくることが予想される。それでもなお、首相談話を発表する必要性があるのか、極めて疑問である。
日本の「植民地支配と侵略」を謝罪した平成7年の村山富市首相談話は、事前に有力閣僚や与党幹部に詳しい説明が行われず、終戦記念日の8月15日の閣議で、半ば唐突に出された。
昭和57年夏の教科書騒動はマスコミの誤報が発端だったにもかかわらず、官房長官談話で「記述是正」を中韓両国に約束した。平成5年の慰安婦に関する官房長官談話は、根拠なしに慰安婦の“強制連行”を認めた内容だった。
国民のことを少しも考えず、ただ近隣諸国に配慮するだけの首相談話などは不要である。
(産経ニュース2010.8.5)
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