【主張】日韓併合100年 「自虐」談話は歴史歪める
《解決済みを蒸し返す連鎖絶て》
与野党で異論が相次ぐ中、日韓併合100年に合わせた菅直人首相談話が閣議決定された。談話発表が強行されたことは、極めて遺憾である。
首相談話は日本政府の公式な歴史的見解としての意味があり、後の内閣の行動などを事実上、拘束する。それだけに歴史を歪(ゆが)めた私的な見解は断じて許されない。必要なはずの国民的な合意づくりも一切、欠落していた。
菅首相談話の最大の問題点は、一方的な歴史認識である。
談話は「(日本の)植民地支配によって、(韓国の人々は)国と文化を奪われ、民族の誇りを深く傷付けられた」として、「多大の損害と苦痛」に対する「痛切な反省と心からのお詫(わ)びの気持ち」を表明している。
日本の「植民地支配と侵略」を謝罪した平成7年の村山富市首相談話を踏襲したように見えるが、それ以上に踏み込んだ内容だ。菅談話は明治以降の日本の先人たちの努力をほぼ全否定し、韓国の立場だけを述べている。どこの国の首相か疑ってしまう。
35年間に及ぶ日本の朝鮮統治には、反省すべき点もあるが、鉄道建設や教育の普及など近代化に果たした役割は大きい。朝鮮名を日本式の姓名に変える創氏改名や日本語教育も行ったが、それらは強制されたものではない。
歴史教科書の記述や学校の授業では、菅談話や村山談話などにこだわらず、日本の朝鮮統治について、事実に即して光と影の部分をバランスよく伝えるべきだ。
≪疑問多い対韓支援事業≫
菅談話のもう一つの問題点は、日韓基本条約(昭和40年)で解決済みの対韓補償問題が蒸し返される恐れもあることだ。
談話は、日本に保管されている「朝鮮王室儀軌(ぎき)」などの古文書の返還に加え、在サハリン韓国人支援などの人道的協力を「今後とも誠実に実施」するとしている。在サハリン韓国人支援とは戦時中、朝鮮半島から樺太(現ロシア領サハリン)へ渡り、すぐに帰国できなかった韓国人への支援事業のことだ。仙谷由人官房長官が深くかかわってきた。
多くの人は企業の募集などに応じて渡航し、残留を余儀なくされたのは戦後、サハリンを占領した旧ソ連が国交のない韓国への帰国を認めなかったからだ。
しかし、「日本が強制連行し、置き去りにした」とされ、韓国への永住帰国者のアパート建設費や一時帰国する人の往復旅費、サハリンに残る人のための文化センター建設費など70億円近い支援を日本政府が負担させられてきた。
まだ、日本の補償が必要というのだろうか。日韓基本条約で日本は無償供与3億ドルと政府借款2億ドルの経済協力を約束し、双方の請求権は「完全かつ最終的に解決された」と明記されている。
菅首相は補償・請求権の問題について「日韓基本条約の考え方を確認し、法律的な形のものは決着済みという立場だ」と述べた。それならなぜ、その点を菅談話に盛り込まなかったのか。
仙谷氏は先月、新たな個人補償を検討する考えも示している。菅談話をたてに、韓国側が対日補償請求を蒸し返してくる可能性がある。際限のない補償は日韓基本条約に反し、許されない。
≪国民的な合意なく発表≫
首相談話を出すこと自体に反対論や慎重論を唱えていた与野党の有力議員らの言動が、中途半端に終わったことも理解に苦しむ。
玄葉光一郎公務員制度改革担当相(民主党政調会長)は閣僚懇談会で、「早い段階で、より詳細な相談が(民主党側に)あってしかるべきではなかったか」と官邸側の拙速な対応を批判した。
自民党の谷垣禎一総裁も5日の記者会見で「(首相談話を)出す必要があるのかどうか、大きな疑問だ」と言っていたが、談話発表の直前には菅首相に「村山談話を逸脱しないよう」求めるにとどめた。野党のリーダーがこのような認識では、姿勢が疑われる。
日韓併合100年の節目はまだ先だ。併合条約は明治43(1910)年8月22日に調印され、29日に公布・施行された。議論する時間は十分にあったはずだ。
村山談話も事前に閣僚らへの詳しい説明がなく、唐突に閣議決定された。自民党を中心に、秋の臨時国会などで、菅談話や村山談話の作成から閣議決定に至る過程について徹底追及すべきだ。
(産経ニュース2010.8.11)
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