【産経抄】9月28日
1891(明治24)年、来日中のロシアの皇太子が、大津で警備中の巡査、津田三蔵に切りつけられて負傷した。その夜、京都のホテルの一室に、松方正義首相ら、5人の大臣が集まり、元老、伊藤博文も駆けつける。
▼皇太子が治療を受けている隣室には、日本人は誰も入れてもらえない。ロシアから、戦争を仕掛けられる恐怖におびえながら、皇太子に機嫌を直してもらおうと、一同必死で知恵を絞る。
▼「賠償金で勘弁してもらおう」「われわれがコサックダンスを踊ったら喜んでもらえるかも」「犯人の津田を死刑にできないか」「いっそ暗殺した方がいい」。思いつきの策をめぐらすうちに、事態はますます悪化していく。
▼劇作家、三谷幸喜さんの『その場しのぎの男たち』は、「大津事件」をモデルにした抱腹絶倒のコメディーだ。もっとも、きのうDVDで見直すと、背筋が寒くなった。尖閣諸島周辺での中国漁船衝突事件をめぐる日本政府の対応を、そのまま再現しているように思えるからだ。
▼どうやら菅政権は、那覇地検に責任を負わせて中国人船長を釈放すれば、中国側が軟化すると、勝手に思いこんでいたようだ。中国が、その場しのぎの日本の対応を見逃すわけがない。案の定、ますます居丈高になって、謝罪と賠償まで要求してきた。河北省で拘束されている日本人4人の、釈放のめども立っていない。
▼大津事件で津田には無期判決が下った。死刑を望んだ政府の圧力に抗し、大審院長、児島惟謙が「司法の独立」を守った、と歴史の教科書にある。一方、今回の中国漁船衝突事件は、平成の「その場しのぎの男たち」が中国に屈した、最悪の外交の事例として、紹介されることだろう。(産経ニュース2010.9.28)
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