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2011年1月 1日 (土)

【正論】拓殖大学学長・渡辺利夫 闘争本能失った国と個人を憂う

 いずれのエッセーだったか思いだせないが、会田雄次先生が書かれたある文章を記憶している。

 母親と子供が民家でともに焼け死んでしまうという事故が連続して発生したことがあった。どうしてこんなに痛ましいことがつづくのかと先生は嘆き、ある想像をしていた。ひょっとして、母親は火をみて立ちすくみ咄嗟(とっさ)の行動を取れないまま火に巻かれてしまったのではないか。手の届くところにある花瓶やら椅子やらを投げつけてガラス戸を打ち破り、子供を避難させてやれなかったものか。

 学校でも地域社会でも他人と競い争うことなど悪であるかの如く教えられてきたため、危機から我(わ)が子を守る「闘争本能」が母親から失われてしまったのでないかと先生は述べておられた。

 ◆いじめにも抑止力で対抗

 そういえば、少年時代のことが思い浮かぶ。第二次大戦時、山梨県の甲府に生まれた私は米軍の空襲によって焼け出され、母の里の小学校で何年かを過ごした。田舎の小学校で私は異分子だったらしく、級友の“いじめ”の対象となった。弟を気遣う長兄は、鋭く研いだ鑿(のみ)を私の鞄(かばん)にしのばせて学校に通わせた。鑿を友に向けたことはなかったが、私がそれを隠しもっていることは皆にわかったらしい。以後、私に敵意をみせる者は誰もいなくなった。私に阿(おもね)るような態度の者まであらわれた。

 ままならぬ人の世に生まれ落ちた以上、人間は他人と協調すると同時に闘う気概をもたずして生をまっとうできない。当たり前のことだと私は思うのだが、なぜか現代の日本では協調のみが善しとされ、それがなければ生存が危ういはずの闘争本能を個人も国家もすっかり失ってしまったようだ。

 個人と同様、国家にも生存への強い欲求がある。だからこそ、国家は他国と協調したり提携したり結託したり、はたまた欺いたり脅かしたり戦争に打って出たりもする。むしろ国家や民族は、個人より一段と強くエゴイスティックな存在だといわねばならない。国家や民族が生存本能を没却しない以上、エスノセントリズム自民族中心主義)の克服など見果てぬ夢であろう。

 ◆自民族中心主義噴き出す時代

 冷戦という「大戦争」が終焉(しゅうえん)するや、人々は原初の情念に衝(つ)き動かされて固有の人種集団、宗教集団、言語集団へと分化をつづけ、その過程で地域紛争と呼ばれる「小戦争」を飽かず繰り返してきた。フランスの政治学者ドミニク・モイジは自著『「感情」の地政学』(櫻井祐子訳、早川書房)の中で、冷戦終焉後「自分が何者なのか、世界の中でどのような位置を占めるのか、生きがいのある未来があるかどうかに確信が持てない諸国民によるアイデンティティーの探求が、イデオロギーに代わって歴史の動力と化した」と述べている。モイジは、冷戦終焉により歴史は終わったと主張したフランシス・フクヤマよりも深く現実を凝視している。

 ◆憎悪の情念に囲まれた日本

 モイジのいう通りだと思う。反日感情を昂揚(こうよう)させ挑戦的な行動に出なければ、自らの情念を抑えきれない国々に日本は周辺を固められている。抗日をアイデンティティーとする中国共産党は「愛国主義」の旗を下ろして日本に向かうことはできない。韓国で「親日・反民族行為真相糾明特別法」が超党派の共同提案で成立したのは、つい5年前のことである。憎悪の情念を日本にぶつけてこない北朝鮮は想像することさえ難しい。

 メドベージェフ大統領とプーチン首相のロシア双頭体制が発しているメッセージは「1989年からこの方、お前たちはわれわれを厚かましくも見下してきた。だがそんな時代は終わった」というものだ、とモイジは解釈する。そうにちがいない。ならば、日本も臍(ほぞ)を固めるべきだが、そんな気配はない。専守防衛やら非核三原則を繰り返すだけで身がもつとは思えないにもかかわらず、である。

 我が政権党は、普天間飛行場移設という国家安全保障の問題をポピュリズム(大衆迎合主義)の軽い言葉で語って、唯一の同盟国との関係を手ひどく毀損(きそん)してしまった。それでも別段あわてている様子はない。韓国併合百年に際しては、道義において自国がいかに劣っていたかを諄々(じゅんじゅん)と説いて自国の歴史を貶(おとし)め、これをあたかも謙虚で率直で勇気のあることであるかのように粋がっている。

 中国船舶に領海を侵犯され、これを拿捕(だほ)したものの、船舶と船員は早々と帰国させ、逮捕・勾留した船長も結局は処分保留のまま釈放という屈辱を味わわされたのは、わずか3カ月前のことだ。北方4島は日本固有の領土だというのは口先だけ、ここにメドベージェフ大統領が来訪する蓋然(がいぜん)性が高いという情報があげられても、外交ルートを通じて訪問を阻止しようという気概などなかった。

 国家の本質にかかわることが立てつづけに起こっているのだが、指導者たちはこれらをさして深刻なものとして受け取ってはいない。日本と日本人の闘争本能はもう毀(こわ)れてしまったのか。(産経ニュース2010.12.31)

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