【産経抄】1月1日
正月早々大雪に見舞われた方々には申し訳ないが、晴天の地方でもう初日の出を拝まれた人も多いだろう。昨日のお日様と変わらないけど元旦には手を合わせる。太陽の恵みを受けて稲作文化を育んできた日本らしい新年の迎え方である。
▼古代、大和地方で国づくりを始めた人たちの太陽への畏敬の念も厚かった。太陽神・天照大神を天皇家の祖先と信じるようになったのだ。大和からほぼ真東にあたり「太陽の門」のように思える伊勢の地に祭ったのも、そのためだった。
▼『日本書紀』によれば、大和から旅に出た天照大神自身が「可怜(うま)し国なり」とおおせになり鎮座が決まったのだそうだ。それが伊勢神宮である。以来、皇室の祖神というだけでなく、日本人みんなに豊かさをもたらせてくれる神として敬われてきた。
▼その伊勢神宮の年間参拝者が昨年、860万人を超えた。何と統計が残る明治28年以降最多なのだという。5年前に取材したときには、参拝者は年々減少傾向にあり毎年600万人程度ということだった。それだけに、この爆発的増加は驚きであり、大ニュースにも思えた。
▼神宮は2年後には、20年ごとに社殿を隣に移す「式年遷宮(せんぐう)」を迎える。その前後には参拝者が増えるというが、それだけではない。若い人を中心に今、神秘的な場所で力を得ようという「パワースポット」ブームがある。それに乗っかった面もあったらしい。
▼江戸時代、数次にわたって起きた「おかげ参り」という伊勢参拝ブームと似ていなくもない。その背景を探ってみる必要もありそうだ。いずれにせよ、日本人が古来の神々に目を向けることは歓迎していい。この国の成り立ちを考えるきっかけともしたい。
(産経ニュース2011.1.1)
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