【主張】新成人に 君らの元気が次代を作る
きょう成人の日を迎えた君たちは、一体どんな思いを新たにしただろうか。確かに政治も経済も先行き不透明の中で、就職もままならない若者世代には閉塞(へいそく)感だけがのしかかり、おとなになった喜びも夢もあったものではないかもしれない。
しかし社会は、日本の将来を支えていく君たちに大きな期待を寄せている。そこで、君たちの多くが20歳を迎えた昨年に話題を呼んだ歌とテレビドラマに事寄せて、心からのメッセージを贈ることにしよう。
植村花菜さんの「トイレの神様」は、多くの人に感動の涙を流させたヒット曲である。日常的に恩恵を受けながら、そのありがたさを忘れがちなトイレと同じように、「おばあちゃん」も大切な存在だったことに気づいた「私」は、「おばあちゃん ホンマに ありがとう」と詞を結んだ。
自分の周りには、神様のように目には見えないけれども大切なものがずいぶんとあり、それに心を寄せれば心がピカピカに磨かれることを、この独白ふうの歌は暗に教えてくれている。
新成人の諸君も、これまで守り育ててくれた両親や周りの人たち、仲間らに対し「ありがとう」の気持ちを新たにすることを、おとなへの第一歩にしてほしい。
ドラマでは昨年、NHKの『龍馬伝』が評判となり、坂本龍馬ブームが起きた。今の時代が「龍馬」を求めていることがブームの背景にあるとの見方もある。当時も、外国の脅威が増しつつあり不安感がたれこめていた。
そんな時代に土佐に生まれた龍馬は、19歳で江戸に出るや日本が置かれた厳しい状況に目覚め、やがて薩摩の西郷隆盛と長州の木戸孝允を結びつける。龍馬にしろ隆盛、孝允にしろ、みな20~30代で時代を動かしたのだった。堅苦しい身分制度を打破し、積極的に地域社会(藩政)や国の改革をめざしたからこそ、あの大偉業が成し遂げられた歴史に学びたい。
ネット上に愚痴をこぼすだけだったり、「どうせよくならない」と諦めたりするような傍観者的態度は若者らしくない。春には統一地方選挙もある。投票権を行使し、「自らの将来は自らの手で」との意気込みで社会に積極的にかかわっていってほしい。
おとなの身勝手な言い分に聞こえるかもしれないが、君たちの元気が国を元気にするのである。(産経ニュース2011.1.10)
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