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2011年1月13日 (木)

【櫻井よしこ 菅首相に申す】対中戦略はないのか?

 太平洋およびインド洋で国家の盛衰をかけた闘いが展開されている。米中印露および日本を中心にASEAN諸国、パキスタン、イラン、アフガニスタン、テロ勢力などが重要なプレーヤーだ。異なる民族、異なる宗教勢力が、核という大量破壊兵器とその運搬手段のミサイルを手にして、激しくせめぎ合うなか、戦略と気概なき国は他国にのみ込まれていくだろう。

 生き残るには、経済力だけでは不十分だ。アジアの大国であるわが国といえども、軍事力整備に踏みきる覚悟と、ユーラシア大陸、インド洋までを見詰めた大戦略なしには乗り切れない。

 日本の戦略はいかにあるべきか。その問題意識を持って私たち国家基本問題研究所の代表団は昨年12月、インドを訪れた。

 安全保障担当の首相補佐官、シヴ・シャンカール・メノン氏は、会うなり述べた。

 「国際政治の枠組みが急激に変化しています。経済も軍事も同様です。日印双方にとってのこの大好機をどう生かしていくか、戦略を話し合いましょう」

 同補佐官は、インドは官民こぞって、歴史的経緯と国柄から、日本こそ最も望ましいパートナーだと考えていると強調した。

 日印にとどまらず、国際社会の共通の課題は中国の位置づけである。メノン補佐官はこう述べる。

 「われわれは同じジレンマを抱えています。隣人(中国)は国境を侵すのをはばからず、われわれに直接的脅威を及ぼします。国力増大に伴い、彼らの外交や振る舞いは、強い自己主張で貫かれ始めました。日本は海洋と島嶼(とうしょ)問題に、われわれは陸上の国境問題に直面しています。それでもこの地政学的大国とは折り合わなければならず、日印は、中国に対して競争と協力という同じような解決策に落ち着きました」

 菅直人首相や仙谷由人官房長官らの民主党政権が、中国に心理的追従を続けるように、インドの対中外交にも半歩引く姿勢がないとはいえない。1962年の国境紛争での大敗が尾を引いているとの解説もある。加えて、インドは経済、軍事の双方で、現時点では中国にかなわないと考えがちだ。

 しかし、昨年12月、中国の温家宝首相の訪印時には気概も見せた。中国をはるかに凌(しの)ぐ技術大国で、中国に匹敵する経済大国で、中国に負けない軍事力も持ちながら、中国にまともに物を言えない日本に比べると、インドは真っ当な外交を展開したといってよい。

 国境問題でインドは譲らずに一矢報いたのだ。インド北東部のアルナチャル・プラデシュ(AP)州と北部のジャム・カシミール(JK)州は長年中印両国が領有権を争ってきたが、この1~2年、中国が特に強硬に出始めた。

                   ◇

 一部地域には軍まで送り込んで、強引に中国領としての既成事実を積み上げようとする中国に、インドは強く抗議した。中国は一向に応えない。そこでインドは、従来中印会談の度に、チベットと台湾は中国の一部として、「中国はひとつ」と表明してきたのを、12月の首脳会談では表明しなかった。台湾の独立を認めたわけではないが、明らかにインドは闘うべきところで闘っているのである。

 中国のインド攻略は入念である。中国は十数年かけてインドを取り囲む軍事拠点を完成させつつある。インドの対中対処能力を殺(そ)ぐために、インドと対立するパキスタンに核を与えた。北朝鮮に核を与えたのは日本を同様の状況に置くためだと、インドの専門家は指摘する。

 中国は1982年、トウ小平のときに、第三世界に核およびミサイルを拡散する方針を決定、その拠点が北朝鮮とパキスタンであることは専門家らが指摘してきた。第三世界への核拡散の元凶は中国なのであり、北朝鮮とパキスタンも同様だといってよいだろう。

 インド政府高官はこうした世界の核の事情を日本政府と日本人に知ってほしいと語る。インドとの原子力協定をめぐって、インドが核拡散防止条約(NPT)に参加していないこと、将来核実験する可能性があることをもって、日本が原子力技術の移転に二の足を踏んでいることを指しているのだ。

 「だが」と高官は語る。「インドは一度たりとも核技術を他国に広めたことはありません。インドの核保有はパキスタンの核の前では自衛の核が必要だという点に尽きます」

 NPT加盟国の中国と北朝鮮が核拡散の元凶であるという皮肉、NPT非加盟のインドが核拡散をしてこなかったという事実。日本の未来のための大戦略は、NPT加盟国か否かという外形にとらわれるのでなく、実態に基づいて構築されなければならない。日本は米国のみならず、インドとの協調を必要とするのである。中国に正しく向き合うためにも日米印の同盟、協調が欠かせない。そのためにも日印原子力協定に早期に踏み切るべきだ。

 戦略的視点から、私は前原誠司外相が提唱した日韓同盟も、北沢俊美防衛相が唱えた武器輸出三原則の見直しも支持するものだ。

 だがそうした発想を受け止める力は首相にはない。必ずや国民の支持を得たであろうに、武器輸出三原則の見直しは見送られた。時代を読みとれない首相には、日韓同盟はなおさら、荷が重すぎるだろう。

 メノン氏は戦略を語ろうと言ったが、わが国首相の貧しい発想には戦略などないのである。

(産経ニュース2011.1.13)

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