【産経抄】2月17日
「一つの概念をしゃべるとき、その内容か表現に独創性がなければ男子は沈黙しているべきだと竜馬は思っている」(『竜馬がゆく』)。司馬遼太郎が竜馬を通して、政治家の言葉の重みについて語っている。
▼政界で失言問題が起こるたびに、この一節を思い出す。もっとも今回の鳩山由紀夫前首相の発言は、失言のレベルをはるかに超えてしまった。沖縄県の地元紙のインタビューで、米軍普天間飛行場の県外移設を断念する理由として「在沖縄海兵隊の抑止力」を挙げたことを、「方便だった」と語ったとは。
▼日米の同盟関係を傷つけ、沖縄県民の気持ちを逆なでした。その真意は何か。民主党の小沢一郎元代表とともに、菅政権を引きずり下ろす魂胆かと勘ぐる向きがある。買いかぶりというものだ。
▼前首相は普天間問題では当初、「最低でも県外」と自信たっぷりだった。母親からの資金提供については、国会への資料提出を約束し、首相辞意表明の際は「次の総選挙には出馬しない」と明言した。結局「なんちゃって」と言わんばかりに、すべてを反故(ほご)にする。
▼前首相のほとんどの発言は、その場を取り繕うための「方便」にすぎなかったのではないか。今さら前首相の資質を論じても仕方がない。こんな人物に日本のかじ取りを委ね、今も続く政治の混迷を招いた事態を、深く反省するしかない。
▼「男子はすべからく酒間で独り醒(さ)めている必要がある。しかし、同時に、おおぜいと一緒に酔態を呈しているべきだ」。司馬はこうも言う。男子を有権者と置き換えれば、あの「政権交代」の4文字が躍った総選挙がよみがえる。酔態を呈するばかりで、醒めていなかった代償はあまりにも大きい。(産経ニュース2011.2.17)
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