沈まぬ太陽(山崎豊子)
国民航空(モデルは日本航空)社員で同社の労働組合委員長を務めた主人公、恩地元(実在の日本航空元社員・小倉寛太郎がモデル)が受けた不条理な内情を描き、人間の真実を描いた作品。フラッグ・キャリアの腐敗と、単独機の事故として史上最悪の死者を出した日航機墜落事故を主題に、人の生命に直結する航空会社の社会倫理を表現した作品である。
他方、当時激しく対立していた日本航空の労働組合や 経営陣の、対立する片側へしか取材活動を行わなかった点。虚実をない交ぜにし見る者にそれを区別できなくしている点。多数の創作があり一方に偏った視点か ら白と黒を別けるような書き方が目立つ点などがあるとされ論争を巻き起こした。「実在の人物(一般社員)をそれと判るように批判的に書いているため、日本 航空の労働組合同士の対立や経営上の対立に恣意的に利用された作品」というような評価もある。
但し、社会的関心の強い「モデル小説」というものに対する理解があれば、上記の肯定論・否定論は当事者にとっての愉快不愉快はあるものの、文芸としての意義は否定できない、という評価もある。
なお、「週刊新潮」に連載中、日本航空は機内での雑誌販売のサービスの際、「週刊新潮」販売を取りやめている。
小説の内容から映像化は困難[1]と見られていたが、2006年5月、角川ヘラルド映画(現・角川映画)によって2008年夏公開を目指し製作されることが発表された。だが、日本航空などからの強い反発などにより、2008年7月の時点で公開の目処は立っていなかった。同じ著者による「白い巨塔」を二度にわたって映像化したフジテレビが2009年の開設50周年にあわせてテレビドラマ化の企画があったが、モデル企業の日本航空に配慮してか、立ち消えになっている。しかし2008年12月角川映画は、2009年秋公開として正式に映画化を発表した。監督は若松節朗、主演は渡辺謙。角川ヘラルドに吸収合併された旧・大映の社員が奔走し、映画化にこぎつけたという。2009年1月に、イランでクランクイン。アフリカなどの撮影を予定しているという。飛行機のシーンは、CG処理によって再現するという。
映画化について、日本航空は「ご遺族の中には映画化を快く思っていない方もいらっしゃる。すべてのご遺族の心情をきちんと汲んで欲しい」と映画化反 対のコメントを出している。また、日航から角川ヘラルド映画に対し「名誉毀損の恐れがある」と警告文を2度送っているという。 日航や一部遺族の反発を恐れてか、角川は「映画は全くのフィクション」とコメントしている。
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