2019年12月
1 2 3 4 5 6 7
8 9 10 11 12 13 14
15 16 17 18 19 20 21
22 23 24 25 26 27 28
29 30 31        

最近のトラックバック

プロ野球データFreak
セリーグ順位表
パリーグ順位表

大阪の税理士が送る阪神

« 『経営者には経験と教養が必要』野中郁次郎(一橋大学大学院名誉教授) | トップページ | 大和ハウス子会社 11年以上にわたり不正会計 »

2011年2月 3日 (木)

グーグルで必要なことは、みんなソニーが教えてくれた(辻野晃一郎)

 とてつもない発想、旺盛なチャレンジ精神、圧倒的なスピードで世界を席巻するグーグルやアップル。その大攻勢の前になすすべもないのが現在の日本企業だ。かつて世界をリードした日本は、なぜシリコンバレー発の米国企業に太刀打ちできなくなってしまったのか。ソニー勤務後、2010年4月までグーグル日本法人社長を務め、シリコンバレーの実情を知る辻野晃一郎氏は「米国企業が手本としたかつてのソニーのようなスピリッツを取り戻せば、日本企業はきっと復活できる」と語る。

 私が22年間勤めたソニーを辞め、グーグルに就職したのは07年4月。シリコンバレーの本社に行ってカルチャーショックを受けたが、第一印象は、いろんな国の人々が、広大な敷地の中で本当に自由に楽しそうに仕事していたこと。

 映画のスターウォーズに出てくるサロンの情景を思い出したりした。恐竜の骨格のオブジェがあったり、大学以上にカジュアルな雰囲気が漂っていた。シリコンバレーの企業には似たような雰囲気の会社が多い。なぜなのか?

 グーグルのような会社には、常に新しい発想によるイノベーションが求められる。CEOのエリック・シュミットは「イノベーションのためにはコミュニケーションが一番大事」とよく言っていた。コミュニケーションというのは、相手が誰であってもフェアに自分の主張をし、同時に相手の言うことに対し、謙虚に耳を傾けることだと思う。

 担当役員や部長から何か言われて、反対意見が言えなくなるようではダメなのだ。グーグルは肩書を意識せず、フラットなコミュニケーションを取りやすい環境を意識的に作っていた。カジュアルでフランクな雰囲気は、その意味でとても大事に思える。

 一方、日本の企業を見ると、カジュアルな雰囲気はほとんど感じられないし、上司は部下の意向を無視して「業務命令」という名の下に仕事を押しつけているケースもある。これではコミュニケーションが成立しないし、新しい発想も生まれないと思う。

 もう一つ、グーグルではCEOを含めて、原則的にすべてがハンズオン(自ら動く)だった。私の入社直後にCEOのエリックが来日したが、日本での滞在時間はわずか20時間ほど。その間に社員を集めて会議を開き、パートナー訪問やインタビューもこなした。さらにその合間を縫って、自分で出張レポートを書き、本社に送付。すぐに本社から問い合わせの連絡が入るという具合で、彼の仕事ぶりは、まるで一陣の風のようなスピード感に溢れていた。

 これに比べて、日本の大企業のトップはどうか。何事も秘書や部下まかせにすることが多いのではないだろうか? エリックの仕事ぶりに接し、経営者の本来あるべき姿を見たような気がした。

オンライン時代にこそ
「楽観主義」が必要になる

 しかし実はそんなグーグルに接して思い出したのは、かつての世界のトップカンパニー、日本のソニーだった。

 創業者の盛田昭夫氏や井深大氏(ともに故人)は、グーグルと同様に肩書や階層にとらわれないフラットなコミュニケーションを奨励。地位や役職に関係なく、互いを「さん付け」で呼び合った。創業者でさえも「盛田さん」「井深さん」。これがソニーの原理原則だった。私のソニー入社は1984年なので、盛田さんや井深さんとはあまり直接的な接点のない世代だが、2人の印象は今も強烈だ。

 だが、今の学生たちに盛田さんや井深さんの名前を出したり写真を見せても誰も知らない。確かに現在のソニーにかつての輝きはないが、60年以上前の日本に、世界に誇る起業家がいたことを、若い人たちが知らないことに大きなショックを受けた。だからこそ私たちの世代が語り継いでいかなければならないと思う。

 ソニーが設立されたのは1946年。その企業スピリッツは、井深氏が書いた次のような設立趣意書によく表われている。

〈真面目なる技術者の技能を、最高度に発揮せしむべき自由闊達にして愉快なる理想工場の建設〉

 技術者とイノベーションを大事にするという点で、かつてのソニー・スピリッツとグーグル・スピリッツはとてもよく似ていると思う。グーグルのビジネス展開の速さには驚くが、当時のソニーの仕事のスピードも速かった。社員はみんな自由闊達で、愉快に伸び伸びと仕事をする点も同じだ。「フラット」「ハンズオン」「スピード」「楽観主義」……本当に共通点が多い。

 最近、不景気だからか、暗い表情をしたビジネスマンをよく見かけるが、シリコンバレーには悲壮感はまったくない。本当にこいつはバカかと思うぐらい楽観的な連中ばかりだが、盛田さんも「ネアカが大事。ネクラからは何も生まれない」といつも言っていた。そして彼自身、底抜けに明るい人だった。

前出・設立趣意書には、こんな胸が熱くなる文言もある。

〈不当なる儲け主義を廃し、あくまで内容の充実、実質的な活動に重点を置き、いたずらに規模の大を追わず〉

 儲けを追求するのは企業として当然のことだ。しかし昔のソニーは、なりふり構わずただ儲ければいいという会社ではなかった。初期のソニーにはこんなエピソードがある。盛田さんが渡米した際、会社設立以来初めての大きな商談が来た。東京の本社は「盛田さんを説得して商談を成立させろ」という雰囲気だった。

 しかし盛田さんは頑として「これはOEM(他社ブランドによる生産)だから受けるべきではない」と断わり、相手にこう言ってのけた。

 「うちの会社は50年後にはおたくの会社よりはるかに大きな会社になっている」

 この志の高さがあったからこそ、ソニーはトップカンパニーに成長したのだと思う。

 アップルのCEO、スティーブ・ジョブスの本には、盛田さんの功績を賞賛し、尊敬していたことが書かれている。マイクロソフトのビル・ゲイツも盛田さんの前では緊張した子供のようだった。彼らも盛田さんや井深さんに学び、それを実践して成功したのだ。

 オフライン時代には日本のモノづくりは世界を制した。しかしオンラインの時代に移って、日本は多くの面でシリコンバレーの米国企業の後塵を拝してきた。

 しかし悲観することはない。

 オンライン時代のビジネスの特徴は、マス(集団)の力を活用して、いつでもすぐに修正してアップデートできるということだ。だから、最初は不完全でも、とにかくいち早く世に出して群衆を集めることが重要だ。今までなかった全く新しいものを世に出すのだから、間違えるのは当たり前、問題があれば正していけばいい、という発想なのだ。こうした楽観主義もソニー・スピリッツに通じると思う。

 これまでのような内向きの発想を捨て、盛田さんや井深さんの姿勢を見習い、前向きに新しいチャレンジに取り組めば、次の10年で日本が再び元気になることは決して不可能ではない。

31romlasrzl__bo2204203200_pisitbsti

« 『経営者には経験と教養が必要』野中郁次郎(一橋大学大学院名誉教授) | トップページ | 大和ハウス子会社 11年以上にわたり不正会計 »

書籍・雑誌」カテゴリの記事

経済・政治・国際」カテゴリの記事

経営」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く

コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。

(ウェブ上には掲載しません)

トラックバック

« 『経営者には経験と教養が必要』野中郁次郎(一橋大学大学院名誉教授) | トップページ | 大和ハウス子会社 11年以上にわたり不正会計 »