共通番号制度 Q&A 脱税防止も不正利用の恐れ
納税や年金情報などを一元管理する共通番号制度をめぐり、政府は6月にまとめる大綱の制度設計を急いでいる。制度の利点や課題をQ&A方式でまとめた。
Q 何のための番号か
A 住民票コードや基礎年金番号など、国民一人一人に割り当てられた番号は現在もあるが、分野を横断して全国民の情報を蓄積できる番号はない。政府は共通番号を基に国民の収入や支出、社会保障サービスの利用状況を把握し、脱税防止だけでなく、医療、介護などの質の向上にも役立てようとしている。
Q いつ始まるのか
A 政府は平成26年6月に番号とICカードを全国民に配り、27年1月から税務分野の一部での運用開始を予定している。
Q 利用範囲は
A 国税と地方税の税務に加え、年金・医療・福祉・介護・労働保険といった社会保障分野が対象。国民の理解が得られれば、口座管理を厳正に行うため銀行が預金者の住所変更を追跡調査するなど、民間も利用できるようにする。
Q 便利になるのか
A 番号を通じ、さまざまな機関で社会保障サービスの利用情報などを共有、蓄積できるため利便性も高まる。例えば高額な医療や介護サービスを利用した場合、国の定めた上限を超えた額は払い戻されるが、今の制度では即座に計算できず費用を自分で立て替える必要がある。共通番号ができれば医療機関や健康保険組合などが情報を共有して自動的に計算し、自己負担分以上は支払わずに済む。
Q 国は個人資産の動きを完全に把握するのか
A 預金口座の開設や不動産売買などの情報について、政府の捕捉を可能にするか否かが今後の論点だ。お金の動きを把握すれば税務署は脱税を摘発しやすくなる。消費税増税の際の低所得者対策には所得の正確な把握も不可欠だ。ただ、金融情報の管理強化には国民の反発も予想される。
Q 情報は漏れないのか
A 確かに心配だ。金融機関の取引履歴などの情報が漏れれば、不正利用の恐れがある。政府は番号を配る前にプライバシー保護の第三者機関を作り、情報漏れを監視するとしている。
Q 本当に実現するか
A 似た制度として「グリーンカード制度」の関連法案が昭和55年に成立したものの、個人情報保護の懸念を理由に実施されず、廃止された経緯がある。導入には国民理解が不可欠だ。
(産経新聞2011.2.8)
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