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2011年8月30日 (火)

『復興特需による日本経済再生は期待できない』野口悠紀雄(早稲田大学院教授)

1.今回の東日本大震災で被災した方々の総数は、総人口の1%近くに達した可能性がある。これを参考に、仮に日本の実物資産総額(2007年末で2536兆円)の1%が失われたとすれば、損害額は25兆円だ。したがって、今後1~2年の年間投資額は、10兆円程度となる可能性がある。

2.供給力が十分あるにもかかわらず需要が不足している経済、つまりケインズ経済学が想定するような経済では総生産が拡大する。経済危機後の日本は、こうした状態にあった。エコポイントなどの需要喚起策が効果を発揮したのは、このためである。これと同じ効果を復興投資に期待して「復興特需による日本経済再生」を期待する向きもあるようだ。しかし、そうしたことにはならない。

3.なぜなら、震災後の日本では供給能力に深刻なボトルネックが生じているからだ。それは電力を見れば明らかである。電力はあらゆる経済活動にとって必要不可欠なものだ。復興需要で製品に対する注文が増えても、生産を増やすことはできない。つまり、供給面での制約によって、生産拡大ができないのだ。今後の日本経済が陥る状態は、基本的にはこのようなものである。(参考:「週刊東洋経済」2011年4月2日号)

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