中小企業向け会計基準を簡便化
【金融羅針盤】
中小企業庁と金融庁が共同事務局となって有識者らで構成する検討会が、小規模な中小企業向け会計基準の基本要領の最終案を公表しました。これまでも中小企業向けの会計基準はありましたが、実際の利用は困難で、規模の小さい企業には普及していませんでした。
基本要領は、経理業務の人的資源に余裕がない企業にも負担が最小限になるよう、既存の中小向け会計基準(中小企業の会計に関する指針)と比べて会計処理を簡便にしたり表現をやさしくしたりしています。
経営者は新基準をうまく活用すれば、自社の経営状況を正確に把握するのに役立ちます。さらに、金融機関にとっても取引先の財務状態をより正確につかむことにつながり、与信管理の事務負担が大幅に軽減されることが期待されます。企業の適切な納税に向けたスタートラインともいえます。
検討会は中小企業、金融機関の業界団体関係者や会計学者らで構成し、今年2月から議論を重ねてきました。基本要領は決算書で使用する勘定科目について、多くの中小企業の実務で実際に使用され、慣習になっている項目に絞り込むとともに、一定の場合に簡便な会計処理を容認しています。また、経営者が理解しやすいよう易しい表現を用いて解説も付けています。
基本要領が記載していない会計処理法が必要になった場合は、企業会計原則や法人税法などで定められた慣行のなかから選択できるなど、幅をもたせたのも大きなポイントです。「当期純利益」が「株主資本等変動計算書」のどの欄に対応するかといった解説も付されています。
また、日本にも導入が取り沙汰されている国際会計基準(IFRS)についても「安定的に継続利用できるようにする観点から、IFRSの影響を受けない」と明記しています。中小企業向けIFRS(IFRS for SME)という基準が存在しますが、複雑きわまりないうえ、親会社と連結する作業に役に立たないという意見が専門家の間で根強いことを反映させています。
金融庁などは最終案に対する意見を募集しました。結果を踏まえ最終版を決める見通しです。
(産経新聞2011.12.12)
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