オリンパスの粉飾をめぐり、新旧監査法人が泥仕合
「無事、四半期報告書を出すことができた。これから大変だが、一つハードルを越えられた」。2011年12月15日の決算発表会見でオリンパスの高山修一社長は安堵の表情を浮かべた。
前日の14日、東京証券取引所から求められていた2011年4~9月期および過去5年分の四半期報告書を提出。粉飾決算の影響を反映させた同報告書には、監査を担当したあずさ、新日本の「適正意見」が付され、上場維持に向け第一の関門を越えた。
■「あずさは共倒れ狙い」
オリンパスをよそに緊迫感が高まっているのは新旧の2監査法人だ。
「粉飾がこれだけ巨額の金額、長期間にわたる以上、監査法人は共謀か無能を疑われても仕方ない」。民主党がオリンパス問題で立ち上げた「資本主義・企業統治改革ワーキンググループ」の座長を務める大久保勉政調副会長は責任を厳しく追及する。
風当たりが強いのはあずさだ。同法人は09年6月まで35年にわたりオリンパスの監査を担当。1990年代から続いてきた損失飛ばしも、また国内のベンチャー3社を732億円もの巨額で買収した不適切な取引も、同法人の担当期間内に行われてきた。
ベンチャー3社の買収に伴うのれんの計上に関しては、後に減損を実施させ適正な状態に戻すなど、オリンパスに疑義を呈してきており、あずさは「適正な監査を行ってきたと自信を持っている」(広報・CSR室)と監査批判に反発する。ただ、別のあずさ幹部は「監査先が離れ、潰れる可能性だってないわけじゃない」と懸念。危機感がそうとう募っていることは確かだ。
実際、行動にも表れている。「うちはすべて適切にやっていますから。何も心配いりません」。オリンパスが損失隠しを認めた11月8日、あずさは担当する各監査企業に即日説明に回った。監査法人の切り替えなど離反企業が出てくるのを防ぐためだ。
「あずさはうちとの共倒れを狙っている」。新日本幹部はあずさの“ロビー活動"をいぶかる。3大監査法人のうちの二つが厳しく責任を問われれば影響は甚大。当局の責任追及の手が必然的に緩むことになるからだ。
11月24日には企業統治に詳しい久保利英明弁護士が、12月8日にはオリンパスの調査を行った第三者委員会の甲斐中辰夫委員長が、それぞれ自民党の財務金融部会などによる合同会議で講演。「あずさばかりが悪いように言われているが、新日本にも同様の責任がある」(久保利弁護士)と断言した。関係者によると、新日本の責任に焦点を当てる発言が目立ったという。
久保利弁護士は08年まであずさの顧問弁護士を務めていた。甲斐中委員長は日本航空の経営破綻後に設立された調査委員会で委員を務め、一部の会計処理に関し新日本の監査に難を示した経緯があり、「新日本は甘い監査をすると刷り込まれている」と新日本幹部は顔色を曇らす。
■新日本は委員会でPR
対する新日本も手をこまぬいているわけではない。12月12日に専門家から成る調査委員会を設立。事件発覚後、社内調査を行い、問題はなかったと結論づけたが、外部の人材により再調査を行うことを決めた。あずさからの監査交代時に適切な引き継ぎが行われたかを確認するため、あずさにも調査協力を求める予定。率先した情報開示で、批判の芽を未然に潰す狙いだ。
設立時の会見では高田敏文委員が「なぜ、同様の調査をしないのか。疑問に思う」とあずさの姿勢をチクリ。一方、あずさ側は「再調査は考えていない。もし実施するなら、日本公認会計士協会や金融庁主導で、客観性が保証される形で行うべき」(広報・CSR室)として新日本のヒアリングには応じない構えだ。
金融庁が行政処分を視野に調査を進める中、存亡を懸けた両法人の対立がさらに激しくなる可能性は高い。
(東洋経済オンライン2012.1.6)
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「監査法人として、どう社会の期待に応えるか」が「ものさし」ではないか。
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