【書評】『経済と国家がわかる 国民の教養』(三橋貴明著)
「世界の中心へ近づく」日本
三橋貴明さんはデータをもとにして定説を次々と覆していく手法で、論壇に新風を吹き付けている。
その三橋さんの「常識を疑わないバカが日本を壊す」という刺激的な言葉が帯にある『国民の教養』が話題になっている。全編、知的刺激に満ち、頭の体操にも良い。
テレビでアナウンサーが「北朝鮮は戦前の日本のようだ」と解説していた。偏向教育がもたらした“常識”である。
しかし、戦前でも男子普通選挙が行われ、野党も議会もあった。三橋さんは「ほかの民主主義国家並みの言論の自由があった上に、大政翼賛会発足前までは頻繁に選挙により政権が交代していた」と指摘する。国民は己のレベル以上の政治を持てない、と言われる。
マスメディアは、政治が悪いと言う。しかし、日本丸を迷走させている政権政党、一部政治家を選んだ有権者に責任はないのか。
三橋さんは、橋本龍太郎内閣は緊縮財政を強行し、国民を不幸に陥れたが「橋本内閣は国民の投票行為によって誕生した」とし、「民主主義国においては、最終的には有権者の責任となる。だからこそ、国民一人一人が真剣に国家のことを考え、投票行為に活(い)かさなければならない」と言う。
三橋さんは歴史に学ぶ大切さをも教えてくれる。
関東大震災後に若槻内閣は緊縮財政を継続した結果、日本経済を昭和金融恐慌に突入させた。また、阪神・淡路大震災後に「緊縮財政(消費税率アップなど)」により、日本経済を奈落の底に突き落とした橋本内閣そのままの動きが、東日本大震災以降の民主党政権にも見られるという。
歴史に学んでいないということだろう。深刻なデフレ下に大増税を断行しようという政府与党首脳にも強く一読を薦めたい。
著者は最後に、世界の人々がその国に憧れを抱き、文化やライフスタイルをお手本とした国が世界の中心とし、日本はその世界の中心へ近づいているという。元気が出る話である。(扶桑社・1470円)
(産経ニュース2011.10.16)
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