【主張】沖縄復帰40年 安保激変乗り切る要石に
沖縄の本土復帰40年を迎え、地元宜野湾市で政府・沖縄県共催の記念式典が行われた。
沖縄は先の大戦で多大な犠牲を強いられ、今も在日米軍基地専用施設の74%が集中する。歴史的にも戦略的にも特異なその境遇に思いをはせつつ日本の平和と安全を見詰め直す機会としたい。
とりわけ国民全体で考えたいことは、この間に日本の安全保障環境が激変したことだ。1972年の復帰当時はベトナム戦争末期に至り、冷戦下の日米にとって最大の脅威は北方のソ連だった。
40年後の今、アジア太平洋の脅威の焦点は、北朝鮮の核・ミサイル開発や中国の強引な海洋進出に変わった。必然的に尖閣諸島を含む沖縄の戦略的重要性も、ますます増大しているのが現実だ。
加えて米国は巨額の国防費削減を迫られ、日本には「米国頼み」を脱して自らの安全確保と日米同盟への一層の貢献が求められていることを忘れてはなるまい。
復帰当時96万人だった人口は140万人となり、本土で活躍するスポーツ選手、芸能人など人的・文化的交流も深まった。半面、本土との経済格差は小さくない。
大戦時の沖縄戦の戦没者は18万8千人で、うち12万人以上が県民の犠牲者だ。戦後も長く米施政権下に置かれた。こうした歴史をもっと国民で共有すべきだろう。
同時に、沖縄県民も悲しい過去を超えて未来にも目を向けてほしい。ルース駐日米大使も「沖縄は日米同盟の礎だ」と評価した。沖縄の位置や役割を冷静にとらえつつ、「安保も経済も」の両立を目指したい。日本の安全が守られてこそ沖縄の平和が維持される。
普天間移設を含む米軍再編計画も基地負担削減と抑止力強化を目的とし、政府は地元振興を図ることが原点だったことを改めて想起することが必要だ。普天間の固定化を回避する道もそこにある。
にもかかわらず、民主党政権下で迷走を重ね、国民の不信や亀裂を招いた責任は重大である。
野田佳彦首相は式典で、同盟強化、基地負担軽減、振興を通じて「日本の安全を確保する」と約束した。その言葉を着実かつ速やかに行動に移してもらいたい。
沖縄は返還されたが、北方領土はロシアに、竹島は韓国に不法占拠されたままだ。これらが返らない限り、戦後は終わらない。そのことも銘記しておきたい。
(産経ニュース2012.5.16)
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