【書評】『巨魁(きょかい)』清武英利著
■一人の男の決死の思い
本書が発売されてから2週間ほど経(た)ったが、この間、スポーツ紙や日刊紙、あるいは一部全国紙の紙面には「清武氏、暴露本出版」などという見出しが躍った。
こうした報道が決めつけるように、本書が、単なる暴露本かそうでないかは、お読みいただければわかるはずだ。
清武英利(きよたけ・ひでとし)氏は、読売新聞グループ本社代表取締役会長・主筆である渡邉恒雄(わたなべつねお)氏のお声がかりで、2004年、読売新聞東京本社運動部長から巨人軍の球団代表に就任した。
当時の巨人軍は2002年にリーグ優勝を果たしたものの、マスコミからは「どん底の状態」とまで言われていた。また、プロ野球そのものが翳(かげ)りを見せ始めた頃でもあった。清武氏の球団代表としての使命は、年々厳しさを増す球団経営のなかにあって、巨人軍の再建とプロ野球人気の再生であった。
が、清武氏の改革の歩みの前に立ちはだかったのは、他ならぬ渡邉恒雄氏その人であった。
新聞人でありながら、公然と「たかが野球選手が」と口走るように、人を人とも思わず、巨人軍を新聞拡販のための道具としか見なさない冷徹な独裁者であった。
本書は、巨人軍再建と球団経営の合理化・近代化、そして、プロ野球の活性化のために心血を注いだ7年間の著者、スタッフの歩みを克明に綴(つづ)った珠玉のノンフィクションである。
読者の多くは、巨大な権力者に異を唱える一人の男の決死の思いを行間に読み取ることだろう。(ワック・1600円)
(産経ニュース2012.3.31)
http://www.amazon.co.jp/%E5%B7%A8%E9%AD%81-%E6%B8%85%E6%AD%A6-%E8%8B%B1%E5%88%A9/dp/4898311792
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