【主張】尖閣質疑 統治強化へ国は行動せよ
東京都による沖縄・尖閣諸島の購入計画について、石原慎太郎知事が衆院決算行政監視委員会で「本当は国がやるべきだ。東京がやるのは筋違いだが、やらざるを得ない状況だ」と述べた。
固有の領土保全を怠ってきた歴代政権を批判しつつ、国に毅然(きぜん)とした行動を求めたものだ。野田佳彦政権は真摯(しんし)に受け止め、尖閣の実効統治強化に本腰を入れるべきである。
石原氏は購入後の整備方針として、都が沖ノ鳥島などの離島で実施した施策である「(増えすぎた)ヤギ駆除や魚礁の設置、新種の発見」などを挙げた。そのうえで、「東京はできる限りのことはやる。飛行場や港(の建設)は国がやることだ」と促した。
いずれも、尖閣統治を確実なものにする有力な方策だ。
尖閣諸島は現在、魚釣島など4島を民間人が所有し、国が賃借している。石原氏は将来の国有化を否定していない。購入後の所有権の問題についても、国と都、尖閣を管轄する沖縄県石垣市を交え、早急に詰めてほしい。
委員会では、石垣市の中山義隆市長が市による再三の上陸許可を政府が拒んできた事実を指摘した。中山氏によれば、上陸の目的は固定資産税の評価、環境調査、慰霊祭の3つで、慰霊祭は終戦間際に石垣市から台湾に向けた疎開船が尖閣に漂着し、食糧難などで死亡した人を弔う行事である。
自治体の調査や国会議員による国政調査権に基づく調査なども、有効な領土保全策といえる。政府は、海上保安庁の巡視船を同行させるなど安全を確保したうえで、上陸を許可すべきだ。
質疑を受け、藤村修官房長官は尖閣国有化について「さまざまな検討を行っている」と言及した。また、玄葉光一郎外相は上陸許可問題で「(中山氏は)自民党政権時代も含めた外務省の対応について訴えていた。まず南西諸島方面の守りをきちっとしなければならない」と述べるにとどめた。
石原氏は「自分たちの家に強盗が『入るぞ』と宣言しているのに戸締まりをしない国がどこにあるのか」とも発言した。主権国家として果たすべき役割を比喩的に表現した重い言葉である。
中国の尖閣奪取の意図が明白な状況の下で、野田政権は自らの領土を守り抜く明確で強いメッセージを発しなくてはならない。
(産経ニュース2012.6.13)
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