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2012年6月20日 (水)

【書評】『共喰い』田中慎弥著 抑えられない暗鬱な力

 壊れた自転車や傘の残骸が投げすてられ、汚物が流れこむ川。黄土色の川底もあらわに、流れるともなく流れる変哲もない川。

 第146回芥川賞の表題作「共喰(ともぐ)い」(単行本には第144回芥川賞候補作「第三紀層の魚」も収録)の冒頭にまず出てくるこの川のイメージは、たいへん印象的である。どぎつく誇張されたり、わざとらしく貧相にされたりしているのではなく、そこにあるものとして提示されているにすぎない。

 にもかかわらず、これからはじまる小説の地質が、そこでしっかり固められている感触がある。川沿いの「川辺(かわべ)」と呼ばれる地域に住むひとびとが、登場人物となるわけだが、彼らがどんな生きかたをしているか、どういう暮らしで日々を過ごしているか…。

 およその方向は、読者に見通しがつく。それはもちろんおよそであって、隅々まですべてということではない。しかしその見通しによって、読者はかえって期待をもたされるのだ。燦然(さんぜん)とした華やかさとは遠いかもしれないが、人間の性(さが)の底に結びついた運命的な出来ごとが、待ちかまえているのではないか、と。

 じっさい、17歳の高校生が、ひとつ年上の女子高校生と性の戯れを繰り返したり、サディスティックな暴力をふるう父親の性生活に、恐怖を感じたりする人生には、人間の業(ごう)という観念を思いださせるところがある。どうにも抑えられない暗鬱(あんうつ)な力に、翻弄される人間。高校生の実母で、父親と離婚した中年の女性と、父親の再婚の相手である若い女性とが、悶着(もんちゃく)などおこさず付きあっている関係が、一種の補色のように作用しているのも、この小説の見逃せない特徴である。

 未読の読者のために、結末に触れるのは差し控えるが、この地域の作りだす人間関係の特異さが、こういう結果を生みだすのは、いわば必然という感想が残るとだけ言っておきたい。それは作者の表現力が着実に実った結果である。芥川賞受賞を新しいきっかけとして、作者が独自の小説世界を、ゆっくり確実にひろげてゆくことを期待する。(集英社・1050円)評・菅野昭正(文芸評論家)

(産経ニュース2012.2.26)

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コメント

とても魅力的な記事でした!!
また遊びに来ます!!
ありがとうございます。。

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