中小企業金融円滑化法、終了期限迫る-進まぬ対策、倒産に警鐘
リーマン・ショックを発端にした金融危機や景気の低迷に伴い、中小企業の資金繰り悪化などの対応策として実施されてきた中小企業金融円滑化法(用語参照)が2013年3月で終了期限を迎える。ところが、それに備えて対策を講じている中小企業は依然わずかと見られ、倒産件数の増加が懸念されている。こうした中、中小企業のM&A(合併・買収)仲介事業を展開する各社は、企業再生に関する特設部署を相次いで設置し、倒産増加の食い止めに懸命だ。
「中小企業は企業存続に向けて危機的な状況を迎えている」―。三宅卓日本M&Aセンター社長は警鐘を鳴らす。これまで中小企業は財務状況に懸念があっても、中小企業金融円滑化法によって金融機関から何とか融資が受けられてきたが、同法の終了をもって、即座に支援を断られるといった事態が中小企業に相次ぐと予想する。
そのため、同社は6月8日にM&A仲介事業を通じて積み重ねた実績を生かし、地域の金融機関などと連携しながらM&Aによる中小企業救済を支援する「企業再生タスクフォース」を結成。中小企業金融円滑化法の終了後、資金繰りに窮する可能性がある中小企業に対して、スポンサーを探すなどといった支援に取り組んでいる。
中小企業に特化したM&A仲介業界で、日本M&Aセンターと並んで存在感があるストライク(東京都千代田区)でも8月1日、中小企業金融円滑化法で資金繰り難にいったん歯止めがかかっていた中小企業をM&Aを活用して支援する「企業再生プロジェクトチーム」を組成。荒井邦彦社長は「他社も同様な取り組みを始めている」と語る。
ところが、中小企業では「すでに金融機関と融資計画の練り直しを進めている」(田島軽金属・田島正明社長)などといった動きが目立たず、むしろ、「金融機関が見捨てるはずがない」と決め込む経営者も少なくないという。中小企業金融円滑化法はすでに2度延長され、現在、企業再生への猶予期間であることが忘れ去られがちだ。
また頼みの綱と期待する金融機関が必ずしも救いの手を差し伸べるとは限らない。すでに毀損した財務状況を抜本改善する猶予期間が与えられたにもかかわらず、旧態依然の中小企業に対して、あらためて融資することは「利益損失につながり金融機関にとってあってはならない行為」(地域の金融機関に詳しい関係者)と捉えるようだ。
M&A仲介各社が開設した特設部署も万能ではない。中でも、事業再生が可能な突出した強みを持つ中小企業を選び出す作業に多くの時間を要するという。そのためM&A仲介各社は「相談を持ち込むには早ければ早い方が良い」(大山敬義日本M&Aセンター常務)と口をそろえる。企業存続に向けて残された時間は決して多くない。
【用語】中小企業金融円滑化法=中小企業などが金融機関に返済負担の軽減を申し入れた際、貸し付け条件を変更するよう努めることなどを盛り込んだ。2009年12月に約2年の時限立法として施行されたが、中小企業の業況、資金繰りが依然厳しいために、これまで2度延長されている。
(中小企業ニュース2012.9.13)
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