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2012年10月26日 (金)

『日本は経済問題が深刻化している』野口悠紀雄(早稲田大学ファイナンス総合研究所顧問)

1.日本の貿易収支が赤字を続けているのは、事実である。しかし、その主たる原因は、対ユーロ圏輸出が減ったことではない。最大の原因は、発電の火力シフトによって燃料輸入が増大していることだ。家電産業の大赤字も、新興国との競争によって生じたものであり、ヨーロッパ金融危機とは関係がない。このように、日本ではヨーロッパ金融危機とは別に、経済問題が深刻化している。これらは、仮にヨーロッパ危機がなかったとしても、進行していたはずのものである。

2.経済危機以降の世界経済を見ていると、「危機を克服できるかどうか、結局は産業力の違いによる」ということを痛感する。ギリシャの問題を解決できないのは、同国に見るべき産業がないからだ。イタリア、スペインは、ギリシャとはだいぶ事情が違う。しかし、両国の産業が強い国際競争力を持っているとは言い難い。それに対してアイルランドにはITや製薬などの強い産業があり、それらは住宅バブルとは無縁だった。
このため、金融や財政は危機に陥ったが、経済は回復した。

3.アメリカには先端産業がある。金融危機を起こした張本人なのに、回復した。金融機関は公的資金を返済した。IT関連の産業は絶好調だ。アメリカの問題は経済の弱さではなく、格差である。失業率は高いままだ。経済のエンジンは強力なのだが、それによって利益を得るのが一部の人々になっているのだ。

(参考:「週刊ダイヤモンド」2012年7月14日号)

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