「家電の王様」テレビでの凋落 イエスマンだらけの採用が仇に
NHKがテレビ60年記念ドラマ「メイドインジャパン」を1月26日から3週連続で放映する。日本の巨大電機メーカーが倒産の危機に直面して、営業や財務、人事などから極秘に選ばれた異端児の社員7人が新設の再建戦略室に集まり、会社救済に動くストーリーで、そこに友情や家族愛、創業家親子の葛藤など人間模様を絡ませている。シャープやパナソニックは2年連続、ソニーは4年連続の大赤字で、存亡の危機といっても過言ではない。ドラマとしても時宜を得たテーマといえるのではないか。制作統括の高橋練氏は「まさに日本のどこかで起きているような現在進行形の番組」と語る。日中の企業関係者約100人に取材し、脚本に反映させたという。
上に挙げた3社の凋落(ちょうらく)はいずれも「家電の王様」と言われたテレビの事業でつまずいたことが大きな要因だが、経営者が投資判断を誤ったり、技術を軽視したりしたことなどによる「人災」の感も否めない。リストラされた技術者が韓国や中国メーカーに転職し、それが日本を追い上げるための競争力向上に貢献した。
さらに言えば、この3社の凋落の本質的な要因は多様性の排除にあるように思えてならない。パナソニックでは中村邦夫相談役が社長、会長時代に意に沿わない役員を徹底排除した結果、周囲はイエスマンだらけになった。ソニーのCEOだったストリンガー氏も同様の傾向にあり、多くの技術者が会社を去った。
シャープは液晶ビジネス「一本足打法」に陥り、それ以外のヒット商品が出なくなった。かつては「目の付け所がシャープでしょ」というテレビCMが一世を風靡(ふうび)し、携帯端末「ザウルス」などがヒットした。デジカメ付き携帯電話を最初に世に送り出したのも同社である。社内から多様な人材を集める「緊急プロジェクトチーム」があり、そこで短期間に社内のさまざまな技術を組み合わせて商品開発をする組織だったが、そんなふうに開発に取り組む風土は、いつの間にか薄れてしまった。
経営者という人材の劣化が組織から異質な考えを排除する流れを招き、それが「新しい価値」の創出を阻み、日本企業の競争力を衰退させているとすれば、ゆゆしき事態である。
「メイドインジャパン」と言えば、筆者はすぐにソニーの創業者、盛田昭夫氏の著書を思いだす。1986年に書かれたものである。その中で盛田氏は味わい深い指摘をしている。「日本の企業は個性的な社員を好まないために、協調とコンセンサスという言葉でごまかす場合がよくある。コンセンサスばかり強調する役員や管理職は、社員の才能を引き出し彼らのアイデアを統合する能力が自分にはないと公言しているのに等しい」
高橋氏もドラマ制作にあたって盛田氏の著書を参考にしたという。ドラマに登場する異端児7人の活躍が見ものだ。
(産経ニュース2013.1.25)
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