【書評】『ケンカ国家論』落合信彦著
■対立恐れぬことで平和と安定
「中国の脅威に立ち向かうために、日本は『ケンカ国家』にならなければいけない」
-これが著者の主張です。
こう書くと、尖閣諸島周辺ですぐにでも武力衝突すべきだという話と思われるかもしれませんが、そうではありません。
日本人は「ケンカ」という言葉には悪いイメージを持っています。衝突や対立を避け、「和をもって尊しとなす」国民性があります。
著者はそうした考えが現代日本のリスクを増大させていると分析します。
確かに「刺激したくない」と繰り返した民主党政権下で、対中関係は改善どころか悪化の一途を辿(たど)りました。
30年以上にわたって世界の紛争地での取材やVIPへのインタビューを積み重ねてきた著者の集大成とも言える本書は、敢(あ)えて対立を恐れずに「ケンカ」に踏み込むことで平和と安定がもたらされるという大胆な仮説を、数々の事例によって証明していきます。
ジョン・F・ケネディ、ロナルド・レーガン、マーガレット・サッチャーといった現代史に名を残したリーダーたちは、敵対する国家のみならず、支持基盤をも堂々と向こうに回して「ケンカ」し、結果として繁栄をもたらしたのです。逆に「ケンカ」を恐れた指導者がどんな破滅的な結末を迎えたかについて、本書の記述は衝撃的です。
安倍政権はもちろん、日本企業と日本人がこれから何をなすべきかを深く考えさせる一冊です。
(産経ニュース2013.3.9)
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