『最高指導者の条件』(李登輝著)
中華民国総統、また国民党主席として中華民国の民主化に貢献し、経済発展も推進した世紀の哲人政治家、李登輝による待望の書き下ろし。
テーマがそのものズバリ「最高指導者の条件」ということで、政治家、経営者のみならずおよそ人の上に立つ人すべてに関わりのある内容である。
多くのリーダーシップ論は、素質があるかないかや技術、カリスマ性、組織について論じていますが、本書の著者は、多くの本に欠けている「心」の問題を扱っている。
大事をなすための「常人が及ばない気概と高い自負心」、「誠意をもって民意を汲む」心、孤独に負けない「信仰」…。
人々の運命を左右する重大な決断をする時に、リーダーに問われてくる「心」の問題を、これでもかこれでもかと問うてくる本書。
テクニック以前のリーダーシップを述べた本として、注目に値する。
リーダーとして人の上に立つ人なら誰でも、時折、心に迷いが生じることがあると思いますが、そんな時こそ紐解きたい一冊。
歴史における指導者の類型を考察すると、重大な決断をするときの苦悩は、人それぞれといっても過言ではないほど異なっている。しかし、共通する点がある。それは、大事をなすために、常人が及ば ない気概と高い自負心を有している点である。
民主国家の指導者という限定でいうならば、指導される者は、「素質」と「能力」に加えて、「誠意をもって民意を汲む」「個々人の幸福のために長期的な計画を策定できる」「組織全体の幸福と発展を実現できる」という条件で、指導者を選ばなければならない。
最高指導者は孤独に耐える力をもたなければ自壊してしまう。そんなときに気力や勇気を与えてくれるのが、信仰なのである。
公義に殉ずる心構えや気概があってこそ、初めて真のリーダーシップを発揮しうる。
権力とは、困難な問題の解決や理想的計画を執行するための道具にすぎない。それは一時的に国民から借りたもので、仕事が終わればいつでも返還すべきものである。
もちろん人は、昨日より今日、今日より明日をよりよく生きたいと願うものである。その意味で進歩は重要だが、進歩を重視するあまり伝統を軽んずるような二者択一的な生き方は愚の骨頂である。
指導者は、中央にいて官僚から上がってくる意見で判断すべきでない。現場で生の情報に接し、迅速に決断することが求められる。
賢明な指導者は、自らの頭脳だけに頼らず、まわりの知恵や力を活用して目標を達成しようとするものだ。
指導者はつねに最前線に立ち、随時、大局に立って決断しなければならない。
部下のメンツを思いやり、その尊厳を重んじることも、また大切。
存在とはアイデンティティであり、希望である。存在が危機に陥れば希望が失われていく。その結果として民心を失い、政党に対する支持も低下する。
結局のところ、国民や国家の真の指導者というのは、時代の要請によって輩出するものなのである。
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