片田珠美(69)ゴルフの本当の醍醐味は…おじさま方が励む理由「死ぬまでセックス」
プロゴルファー、タイガー・ウッズ選手の異母兄が勤務先に爆破予告をした疑いで逮捕されたという記事を先月中ごろ読んで、久しぶりにウッズ選手のことを思い出した。ウッズ選手といえば、数年前に自ら「セックス依存症」と告白したことがある。「セックス依存症」は克服できたのだろうかとげすの勘ぐりをしたくなるが、ゴルフで活躍すればするほど、「セックス依存症」に悩まされずにすむようになるはずだ。なぜか? ゴルフは性交の象徴的代理であり、性欲を昇華するのにうってつけだからである。
こういうことを書くと、「ゴルフを冒涜(ぼうとく)するな」とお叱りを受けそうだが、ボールを細長い棒で打ってホール(穴)に入れる行為が性交を象徴的に代理していることは、疑いの余地がない。特にホールインワンは究極の快感を連想させるからこそ、それを独り占めしたらとんでもない罰を受けるのではないかという恐怖を払拭するために、祝賀会や記念コンペ大会を開いたり、ご祝儀や記念品を贈ったりして、幸運を分かち合う慣習が定着しているのだろう。
そのための出費が何十万円、ときには100万円を超えることがあり、ホールインワン保険に入るゴルファーも少なくないらしい。そこまでしてゴルフをやりたがるのは、それによって得られる快楽が素晴らしいからだろうが、そういうのはだいたい性的な快感の代用品だというふうに、われわれ精神分析医は解釈する。ホールインワンの喜びを独占することに対す美しい風景を楽しむのもゴルフの醍醐味の一つだが、フロイトにいわせれば、風景は女性器の象徴的表現ということになる。「複雑な局部構造を示すもの」である女性器は、「岩や森や水などのある風景として表現されることが多い」のだから。しかも、森や藪は陰毛を連想させるので、まさに女性器めぐりをしながらプレーするのがゴルフなのであり、性交の象徴的代理としてこれほど洗練されたスポーツはない。「お見事!」と拍手喝采したくなるほどである。
一番お勧めしたいのは、「死ぬまでセックス」を夢見ている中高年男性である。年を取るにつれて本物のセックスから遠ざかっていくと寂寥感(せきりょうかん)にさいなまれるが、ゴルフという代理行為によって欲望を昇華することができる。
おじさま方、せいぜいゴルフにお励みあそばせ。
◇
世間を騒がせたニュースや、日常のふとした出来事にも表れる人の心の動きを、精神科医の片田珠美さんが鋭く分析します。片田さんは昭和36(1961)年、広島県生まれ。大阪大医学部卒、京都大大学院人間・環境学研究科博士課程修了。著書に『無差別殺人の精神分析』(新潮選書)、『一億総うつ社会』(ちくま新書)、『なぜ、「怒る」のをやめられないのか』(光文社新書)、『正義という名の凶器』(ベスト新書)など。る後ろめたさも、性的な快感に伴う罪悪感とパラレルになっている。
(産経ニュース2014.1.11)
« 今年の初ラウンド(藤岡GC東) | トップページ | 今年2回目のラウンド(藤岡東GC) »
「スポーツ」カテゴリの記事
- 常勝集団のプリンシプル―自ら学び成長する人材が育つ「岩出式」心のマネジメント(岩出雅之著)(2018.12.26)
- ハードワーク 勝つためのマインド・セッティング(エディー・ジョーンズ著)(2017.07.21)
- 独裁力(川淵三郎著)(2016.11.14)
- 高梨は逆転で今季2勝目 W杯女子第3戦(2015.01.13)
- 大学レベル超越「トップリーグ勢に勝つ!」 6連覇の帝京大、先見据え(2015.01.11)
「心と体」カテゴリの記事
- 友情 平尾誠二と山中伸弥「最後の一年」(山中伸弥、平尾誠二、恵子共著)(2018.07.23)
- 老いの僥倖(曽野綾子著)(2018.05.23)
- ヒマラヤ大聖者のマインドフルネス(相川圭子著)(2017.06.07)
- 「ご先祖を知れば、遺伝子のスイッチはオンになる」(2015.05.16)
- 人間ドック(2015.01.30)
「Golf」カテゴリの記事
- 60歳からでもシングルになれる静かなスイング(新井敏夫著)(2019.11.29)
- ゴルフはインパクトの前後30センチ!(大塚友広著)(2017.08.21)
- 李知姫、3年ぶりV 鈴木愛はプレーオフで敗れる(2015.03.17)
- 宮里美19位、宮里藍24位 米女子ゴルフ最終日(2015.02.10)
- 松山は最終R進めず ソニーOP第3日(2015.01.19)
コメント