『知の武装 救国のインテリジェンス』(手嶋龍一、佐藤優著
■国際情勢読解の技法を満載
シリア危機で見えた米国の超大国終わりの始まり。異形の大国・中国は尖閣諸島への領海侵入や防空識別圏を設定し、膨張を繰り返し、北朝鮮は核・ミサイル開発をやめない。にわかに緊迫する東シナ海など日本を取り巻く国際情勢の深層を日本最強の外交的知性である手嶋龍一氏と佐藤優氏が「読解」する。
インテリジェンスの語源はラテン語のinter(間を)lego(読む)で、「行間を読む」の意味だ。インテリジェンス感覚を磨けば、新聞のベタ記事から国際情勢を読み解き、近未来の変事を察知できる。本書はその技法とセンスが満載されている。
「アベノミクス第四の矢」など経済的側面で論じられることが多い2020年東京五輪開催だが、本書は「尖閣防衛の盾になる」とアジア安保に大きな影響があると説く。「東アジアの平和を先導する祭典」にすることで、「ロシア、韓国と和解し、中国を平和の祭典に引きずり込む戦略が描ける」からだ。
日本の領土・尖閣諸島を力で奪取しようと攻勢を強める中国に対して、安倍内閣は、地球儀外交で、対中包囲網を築こうとしているが、手嶋氏は「腐敗の独裁体制と対峙(たいじ)する最も有効な武器は道義の力」と外交の武器として道義を説けば、佐藤氏は「国際世論を引き寄せ、中韓に楔(くさび)を打ち込むため韓国との関係改善を優先すべきだ」と提言する。
創設された国家安全保障会議(日本版NSC)。器を作っても肝心の人材は省庁からの寄せ集めとなる。「組織が機能するかどうかは、どんな人材をこのポストに充てるのか、総理の器量が試される」(佐藤)。しかし、日露戦争を戦った日本は、シベリアで露探に身をやつしロシアの動向を掴(つか)んだ石光真清ら名うてのインテリジェンス・オフィサーを数多く輩出した。その血脈は現代の日本人にも脈々と受け継がれているはずだ。本書にはそのDNAを蘇(よみがえ)らせ、「将来を担う人材が在野から育ち、近隣の国々からも尊敬のまなざしを向けられるような国に変革してほしい」(手嶋)との著者の思いが込められている。(新潮新書・798円)
評・岡部伸(編集委員)
(産経ニュース2014.1.12)
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