【産経抄】韓国的言論自由 1月14日
「T・K生」と聞いて、ぴんと来るのは、50歳から上の世代だろう。岩波書店の月刊誌「世界」に昭和48年から63年まで連載された「韓国からの通信」の筆者である。
▼朴正煕(パク・チョンヒ)、全斗煥(チョン・ドファン)両政権の人権抑圧と民主化運動弾圧の実態について、反政府側から入手した情報でつづっていた。韓国については暗い話ばかりというのに、北朝鮮批判はほとんどなかった。韓国の「イメージダウン」に、大きく“貢献”したともいえる。
▼「T・K生」の正体が明らかになったのは、平成15年だ。連載当時、日本にいた池明観(チ・ミョングァン)・元東京女子大教授が、ソウルで名乗り出た。既に韓国では民主主義が定着して、もう後戻りはないとの確信があったからだという。果たして、今もそう言い切れるだろうか。
▼朴槿恵(パク・クネ)大統領への名誉毀損(きそん)で在宅起訴された、小紙の加藤達也前ソウル支局長の出国禁止が、さらに3カ月も延長される見通しとなった。朴大統領の年頭記者会見では米紙の記者が、質問のなかで加藤記者の問題に関連して「言論の自由」について触れていた。残念ながら、大統領は言及を避けた。日本メディアは質問を許されず、小紙は出席さえ拒否された。
▼「韓国からの通信」のなかで、当時の言論弾圧を風刺した新聞の漫画が紹介されている。「ベトナムについては大きく報道しているというのに、国内で数千名規模の集会が一段の記事にしかならない。これで言論自由があるというのか」「わからないのかね。それが韓国的言論自由だ」。
▼フランスの連続銃撃テロ事件で、改めて「言論の自由」が注目されている。朴大統領はそれに背を向けて、父親の時代の「韓国的言論自由」に回帰しようとしているのだろうか。池さんに感想を聞いてみたいものだ。
(産経ニュース2915.1.14)
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