【産経抄】1月17日
俳人の長谷川櫂さんは、東日本大震災の直後、湧き上がる真情を俳句ではなく、和歌に託した。「かかるとき かかる首相を いただきて かかる目に遭ふ 日本の不幸」。 ▼歴史に「もしも」は禁句だが、もし民主党政権ではなく、菅直人氏が首相でなかったら、という悔悟の念はいまも消えない。20年前のあの日も同じ思いをした。 ▼平成7年1月17日午前5時46分、大地震が兵庫県南部を襲い、神戸の中心部は一瞬にしてガレキと化した。前年、総選挙を経ずして自民党と社会党、さきがけが野合した結果、村山富市氏が首相の座に就いていたが、首相官邸の初動は、信じられぬほど鈍かった。 ▼当日は、社会党内の「反村山」派が、新党を旗揚げする予定だった。被害の甚大さを物語る情報がぽつぽつと入り始めていた午前8時過ぎでも与党幹部の関心がそちらに向いていたのを、抄子はよく覚えている。閣議が開かれたのは、午前10時をまわっていた。 ▼自衛隊が本格的に出動したのは地震発生から4時間以上もたってからだった。当時、自衛隊の災害派遣要請は、都道府県知事にしかできなかったという法律の不備もあったが、首相と知事に一刻も早く住民を救おうという気概と実行力が欠けていた。国会で初動の遅れを追及された村山首相は「なにぶん初めての経験で…」という迷答弁を残した。東日本大震災直後、菅氏や東京電力が「想定外」という言い逃れを連発したのと、驚くほど似ている。 ▼阪神大震災の反省から危機管理の重要性が叫ばれるようになった。防災対策も大いに向上したはずだったが、3・11で幻想は崩れた。村山、菅の両元首相には、「震災責任」をもっと感じてもらわないと、亡くなった人々が浮かばれない。 (産経ニュース2015.1.17)
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