ルポ M&A仲介の罠(藤田知也著)
日本経済の救世主か? 稀代の詐欺師か?
今日も中小企業は、喰いものにされる
外れない経営者保証、抜き取られた現預金、借金だけ残して音信不通に――
知らないと危なすぎるM&A、そのトラブルの全貌
雇用を守るつもりだったのに。あなたの会社は大丈夫?
事業承継の闇をぜんぶ暴く!
・「来月払う」と約束して払わない新社長
・保証解除は「努力する」としか書いてない
・言われただけの保有資産「15億円」をPR
・「危ない買い手紹介」で成功報酬を稼ぐ仲介業者
・「悪い結果はぜんぶ客のせい」
・顧客をこき下ろす地域金融機関
●実際に起きたトラブルから、問題の所在と原因を探る
私がこの問題に取り組むきっかけは、ある悪質な買い手によるトラブルを知ったことだ。設立から短期間のうちに30社ほどの中小企業を買いあさり、資金が行き詰まった2023年末に代表者は失踪した。少なくとも十数社が事業の停止や倒産といった憂き目に遭っている。 だが、買い手と売り手をつなぐことで「成功報酬」を受け取るM&A仲介業者は、M&Aによってどんな結果がもたらされようとも、報酬を得たままの「一人勝ち」となる。デタラメなM&Aで中小企業を追い込む買い手に問題があるのは言うまでもないが、悪質な手法を繰り返す買い手を紹介して着実に稼げるビジネスのありように、私は関心を抱いた。(「はじめに」より)
●失敗から教訓を得て学ぶ
不幸をもたらす失敗を減らすには、失敗から教訓を得て学ぶしかない。
中小企業のM&Aは、前提となる条件や経緯、環境も背景も千差万別だ。共通する万能薬やチェック項目をつくるのは難しい面もある。
どの立場に立つかによって、見える景色も変わってくる。売り手の視点か、買い手の視点か、あるいは会社で働く従業員の視点か、はたまたM&Aに携わる仲介ビジネスの視点なのか――。
喰うか喰われるかの勝負を制するのは、M&Aの経験を重ねてきた巧者であり、初めて挑む素人は痛い目に遭いやすい。しかし、国の政策によって推進されるものなら、一部のみが潤うようなM&Aではなく、どの立場から見てもある程度の「納得感」が得られるようなM&Aであるべきではないか。
本書は、朝日新聞のデジタル版で展開してきた特集「M&A仲介の罠」をもとに、大幅に加筆して再構成した。
紹介する事例は、2022〜2024年に株式譲渡契約が結ばれた案件が中心だ。新型コロナ禍で金融機関からの借り入れが膨らんだのち、猶予された返済がいよいよ本格化する時期と重なる。その返済に備えて蓄えていた現預金がM&Aを奇貨として流出し、経営難に陥っていくのが典型だ。
実際に起きたトラブルを詳しくたどりながら、問題の所在と原因を探る。似たようなトラブルに見舞われるリスクを、少しでも低減させるのに役立てられたらと願っている。
この問題には、二つの帰結があり得る。
一つは、M&A仲介は危なっかしい領域だと突き放し、社会に向けて強い警鐘を鳴らすこと。相当の知識と注意力を備えて向き合わなければ、痛い目に遭いかねない世界だと知らしめる必要があるかもしれない。
もう一つは、国や業界が問題の根本原因を特定し、顧客が安心して利用できるビジネスに変わる方策を見つけて実現していくことだ。
岐路に立つ日本のM&A仲介ビジネスは、どちらの方角へ向かうのか。本書を通してその行方を探っていく。(「はじめに」より)










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